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展示概要

人が人へ情報を伝える、それを不特定多数で共有する、そして世界共通の命題を解決するために役立つコミュニケーション・デザインの歴史は、19世紀に遡ります。人々の生活をより良くし、未来を拓く道具、空間や都市をテーマとする他の領域も同様です。モダニズム(近代主義)の確立、二つの世界大戦、地球環境に対する意識の高まりなど、私たちの暮らし・生き方を変貌させる出来事が次々と起こった20世紀は、デザインがいっそう身近になりました。デザイナーの活躍の場も広がり、その役割が重要となったのは言うまでもありません。こうした背景を踏まえ、激動の時代を経験してきた勝井三雄(かついみつお)は、常に世の中とデザインの動き、現在の有り様に鋭い視線を注ぎ、明日を見据える創造的な挑戦を60年余にわたって続けています。グラフィック(ポスターなど)、エディトリアル(書籍・雑誌・図録など)、CI(コーポレイト・アイデンティティ)を中心に、サイン、ディスプレイ、空間構成ほか、多様な媒体のアート・ディレクター(AD)を務めるなかで、領域の枠組みにとらわれることなく、デザインの理論・表現について、その可能性と普遍性を模索してきたのです。すなわち、状況にふさわしい視覚伝達を介して、物事の本質に触れるスムーズなコミュニケーションがどれほど人々の相互理解を促し、生活、文化、社会、環境を充実させることができるか、その優れた手段・取り組みの提案こそが、勝井三雄の仕事の根幹にあります。本展は、まず「時代」に焦点を当て、今日に至るデザインの社会史と、国内外のデザイナー、写真家、美術家、建築家、音楽家、評論家、編集者、小説家、科学者、民族学者ら、勝井三雄が影響を受け、協働した人々とのつながりを示すところから展示が始まります。続いて、ポスターや映像など「色と光」の分析・実験・展開に基づく作品群、小冊子のエディトリアルから国家的規模の博覧会ディスプレイまで、あるいは企業・学校・文化施設の存在意義を体現するCI、地球を俯瞰するインスタレーションなど「情報の編集」に係る業績の集大成を紹介します。未発表の資料、最新作も含む今回の展示は、空間構成そのものが勝井三雄の総合的なディレクションにより、「なぜ人間はヴィジュアル・コミュニケーションを必要とするのか」を体感的に考えるための場となります。長年にわたり宇都宮美術館のCIを推進してきた勝井三雄の活動を通じて、当館が主眼とする「20世紀のアートとデザイン」を視覚伝達の観点からひもとく手がかりにもなるでしょう。―デザインは、単なる色とかたちの描出、その成果物ではありません。時代・人々・空間と共振する思想であり、これを実践的に構築し、質の高い可視化を担うのがデザイナーの役割です。勝井三雄のすべての仕事には、そのことが凝縮されています。

プロムナードギャラリー

プロムナードギャラリーでは、壁面全体に渡って勝井三雄のデザインのあゆみを年表形式で展示します。スタートは1800年。現象として色彩を捉えたゲーテの「色彩論」が発表された年代から始めることは知覚との関連で色を捉える勝井三雄のデザイン思考にとって重要な意味を持ちます。この年表では、テクノロジーが社会を動かし、様々な学問領域が横断を始め、近代が構築された大きな時代のうねりと共に、勝井三雄のデザイン活動を紹介していきます。また、勝井三雄と関わりのあった人物や作品、文献、社会のできごとなどを関連させながら時代を追うことで、勝井三雄が何に触発されてきたかを見ることができます。さらに年表と対応する形で勝井三雄の蔵書や、影響を受けた人物とのやりとりが記された手紙など、貴重な資料を公開します。勝井デザインが生まれる背景に、様々な人・もの・ことが共時的または通時的に関連していることが読み取れるでしょう。

中央ホール

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人間が知覚できる可視光を表した巨大インスタレーションを中心に据えた中央ホール。「書物の身体性」を表象した紙のオブジェ、パターンが連続的に変化することによってディメンションにゆらぎをもたらすオプティカルボックス、色彩の変容を主題にしたヴィジュアルが衣服として立ち上がった作品など、光、色彩、形態が相関し連続する世界が、立体・空間へと展開します。また、勝井三雄が世界各地の旅先で拾い集め続けてきた石のコレクションを時系列に並べ、それらがいつどこで、どのような機会で出会ったのか、その遍歴を「石の記憶」と題した年表とともに展示します。それは地球の成り立ちや構造への関心が、太陽系や宇宙へと想像力を飛躍させるきっかけとなった素材であり、勝井三雄のインスピレーションの根源を知る機会となるでしょう。

色光の部屋

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視知覚の原理の探求、色彩と形態の相互作用を表したヴィジュアル、様々な図像が衝突し新たな意味を生成するモンタージュ、時間・空間・光・色彩など、森羅万象あらゆるものの連関が表象化された作品。「色光の部屋」では、光と色という極めて曖昧で捉えどころのない現象を印刷のシステムに置き換え、視覚言語を駆使して定着されたポスター作品を中心に構成します。様々な情報が凝縮されたポスターという二次元平面の世界の中で勝井三雄が試みてきたヴィジュアル・コミュニケーションの探求が展示室全体を覆います。展示室の奥では、人間の内側で起きる知覚を映像化した作品と、宇宙から遺伝子までの巨視的・微視的なスケールが無限に循環し続けるウロボロスの図像からインスピレーションを受けて制作された映像作品が隣接します。

情報の部屋

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光と影に立ち現れる形を見つめ続けた探求が、印刷の網点と出会うことで、勝井三雄のデザイナーとしての原点が形成されました。「情報の部屋」では、ものごとの原理を手がかりに生成されていく多様なグラフィックデザインを網羅します。色彩と形態の相互作用と、変形を加えることで現れる現象を捉えた実験的な習作と版画作品。写真または図像を用いて、異なる意味を自在に接合し、見るものの想像力を刺激するコラージュ作品。作家の存在そのものを書物の構造を用いて「モノ」として刻印する作品集・写真集。PR誌、記念誌、図録や図鑑のデザインを通して、時代によって変化を続ける文化の枠組みを再編していく編集造形。そして多様な情報を統合するためのシステムから捉え直す思考を基盤に、ヴィジュアルコミュニケーションの可能性が空間、環境へと展開していきます。デザインの対象がいかに多様で複雑であったとしても、全体を俯瞰する視座と、個々の情報に連関性を見出す緻密な考察を経て、具体的かつ魅惑的な視覚体験として昇華させるデザインの全貌を公開します。

トークイベント

  • 「視覚の共振・勝井三雄」の展示デザイン

    日時|2019年4月28日[日] 午後2時(開場:午後1時30分)~午後4時
    会場|宇都宮美術館 講義室
    定員|170名(先着) ※企画展チケットをお求めのうえ、会場に直接ご入場ください
    講師|小野田裕士 氏(デザイナー)+中野豪雄 氏(聴き手、武蔵野美術大学准教授)
    内容|勝井三雄の世界観をどのようにして展示空間へと展開したか、その制作プロセスとデザインについてお話します。

  • 伝承のまなざし

    日時|2019年5月19日[日] 午後2時(開場:午後1時30分)~午後4時
    会場|宇都宮美術館 講義室
    定員|170名(先着) ※企画展チケットをお求めのうえ、会場に直接ご入場ください
    講師|寺山祐策 氏(武蔵野美術大学教授)+中野豪雄 氏(聴き手、同大学准教授)
    内容|本展の企画・実現に尽力したお二人が「勝井デザインの魅力」について、デザイン教育者の立場でお話します。

  • 共振する視覚

    日時|2019年6月2日[日] 午後1時30分(開場:午後1時)~午後3時30分
    会場|宇都宮美術館 講義室
    定員|170名(先着) ※企画展チケットをお求めのうえ、会場に直接ご入場ください
    講師|勝井三雄 氏(グラフィック・デザイナー)
    内容|「時代とデザイン」「自身の思想と創造」「デザイン教育」などについて、作家本人がじっくりと語るスライド

  • 担当学芸員によるギャラリー・トーク

    日時|会期中毎週土曜日 午後2時~

アクセス

〒320-0004 栃木県宇都宮市長岡町1077

  • 自動車をご利用の場合
    東北自動車道「宇都宮インターチェンジ」から約10km、「鹿沼インターチェンジ」から約14km。北関東自動車道「上三川インターチェンジ」から約19km。

  • 鉄道、バス等をご利用の方
    JR東北新幹線「JR宇都宮駅」下車、JR宇都宮駅西口5番バス乗場から関東バス「豊郷台・帝京大学経由宇

  • JR宇都宮駅よりタクシーをご利用の場合は約20分。

作品集

作品集「視覚の共振・勝井三雄」

戦後日本のグラフィックデザインを牽引してきた一人である勝井三雄のデザイン思想を凝縮した作品集。
作品紹介のみに止まらず、その背景となったエピソードや、デザインのプロセス、
またはデザイン構築の基盤となったシステムや計画図などを掲載。
1800年から始まる年表や、デザイン教育についての対談など、
勝井三雄が探求してきたヴィジュアルコミュニケーションの世界を読み解くことができる一冊。

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目次
第1部:視覚の共振
I:形の現出    ● 光と影に立ち現れる形 ● エレメントの連続性 ● 視知覚の原理 ● 単位と生成
II:変容のざわめき ● 視覚の越境 ● 言葉と形象 ● 時のコラージュ
III:存在の刻印  ● 思想のかたち ● 美の協奏 ● 時空の記述 ● 存在の証 ● 文化の規定
IV:体系の基層  ● 理念の体系 ● 尺度の発現 ● 知の基盤 ● 俯瞰と組織化 ● 空間の統語法
V:感性の原理  ● 光のかたち ● 光彩のうつろい ● 宇宙と共鳴 ● ゆらぎとゆらぎ
第2部:時代と触発
1801-2019年 勝井三雄とともに読むモダン・デザインのあゆみ
第3部:伝承へのまなざし
武蔵美術大学視覚伝達デザイン学科の教育、その形成と実践

著者:勝井三雄
編集:中野デザイン事務所+勝井デザイン事務所
ブックデザイン:中野デザイン事務所
体裁:A4変型、288ページ
本体価格:3,000円(税別)
ISBN978-4-8138-0109-2 C0072
発行:光村図書出版